第10回 突発的な仕事が発生しても時間内で業務を終えるには(看護管理者のためのタイムマネジメント)
医師の働き方改革を進めるためには、医療機関全体でタイムマネジメントを行わなければなりません。
師長クラスのレベルアップを支えて組織の時間効率を高める方法について、前回の記事でお伝えしました。
今回は、突発的な仕事が発生しても時間内で業務を終えるにはどうすれば良いかについて解説していきます。
業務の優先順位づけでこんな間違いをしていませんか
仕事の効率を上げたいと思わない人はいません。
また、優先順位を全く考えない人もいないでしょう。
しかし、効率よく仕事が行えている実感が持てない人が多いのはなぜでしょう。
答えはシンプルです。
「優先順位づけの方法が間違っているから」です。
よくある間違いは以下の通りです。
① 締め切りの近い順に取り組んでいく
② 手短かに終わらせられるものからやっつける
➂ 頼まれた順に手をつけていく
番外編:依頼主の威圧感で決める
いかがでしょう?
これまでの経験上、多くの人が①または②(あるいは、その組み合わせ)で仕事の優先順位を決めています。
しかし、これが間違いなのです。
簡単に説明していきます。
日々、仕事を締め切りの近い順に取り組んでいくと、自ずと締め切りに追われるようになっていきます。
締め切りのプレッシャーは「締め切り効果」と言われるように良い効果を生む場合もありますが、毎日締め切りに追われているとストレスになりかねません。
その上、締め切りの綱渡りをしている最中に突発的なトラブルが起こったらどうでしょう?
対応できなくなります。
また、手短かに終わらせられるものからやっていくと、数はこなせるかもしれませんが、重責が伴うものや長期にわたって行う仕事を後回しにしてしまい、多くの人に迷惑をかけるリスクがあります。
さらに、頼まれた順に手をつけるのは、新人であればいざ知らず、管理者がやるべきではありません。
また、「あの先生は厳しいから」とか「あの患者はうるさいから」と、依頼主によって優先順位を決めると「あの人は頼む人によって対応が変わる」とマイナス印象を与えてしまいます。
そうならなないためにも、常に先々を見通しながら、ゆとりある計画を立てるための正しい優先順位づけを行いましょう。
その具体的なポイントは次のとおりです。
最優先事項を優先させて時間的ゆとりを生み出す方法
正しい優先順位は「重要度」で決めるのが原則です(詳しい内容は第3回目をご参照ください)。
また、時間管理において最も大事なことは、「最も大事なことを最も大事にすること」です。
管理者としては瑣末なことに振り回されるのではなく、最重要課題に最大の時間とエネルギーを注ぎたいものです。
最重要課題かどうかを判断するポイントはいくつかあります。
それをやらなかった場合の損害の大きさ、与えるマイナスの影響の範囲を考えていただければわかりやすいと思います。
また、特に優先順位を上位にしていただきたいのは、『教育(人材育成)』です。
研修や勉強会などを「時間があればやる」とおっしゃる病院はたくさんあります。
しかし、業務効率が悪い状態から抜け出すためには、まず「抜け出す方法」を学ぶ必要があり、それを活かしていかなければいつまで経っても効率は良くなりません。
順序が逆なのです。
教育は投資です。
投資とは、将来の利益のために今ある資源を投じることです。
将来の組織力向上のために、まず教育に時間を投じる決意をしていただけばと思います。
先手を取る仕事術3つのコツ
時間管理において、後手に回ることは最も避けたい事態です。
なぜなら、突発的な事態に対応しにくくなるからです。
特にインシデントやクレームなどは、発生してしまうと時間が読めなくなり、ストレスも受けます。
周りのスタッフの士気を下げるリスクもあるでしょう。
では、先手を取るために何ができるでしょうか。
まずは投資の意識を持つこと。
次に計画を立てること。
最後に着手タイミングを設定し死守すること。
以上の3つです。
簡単に説明していきます。
投資の意識とは、これまで紹介してきた「緊急ではないが重要なこと(第2領域)」を最優先事項と考えることです。
例えば、人間関係を良くすることで業務連携が向上しますし、リスクマネジメントを徹底することでインシデントやクレームを減らせます。
こうした将来の利益を生み出す活動を優先して行いましょう。
そして、それらをきちんと計画に組み込んでいってください。
さらに、計画に組み込んだなら、「緊急ではない」としてもきっちり取り組みましょう。
そのために着手タイミングを設定して守り抜いていただきたいのです。
今回は突発的な仕事が発生しても時間内で業務を終えるにはどうすれば良いかをお伝えしました。
次回は、「現場の“時間が足りない”を解消する方法」を解説していきます。
看護の質向上を使命とする管理者にとっては非常に重要なテーマです。
また、離職にも直結する課題ですので、楽しみにお待ちください。
第9回 師長クラスのレベルアップを支えて組織の時間効率を高める方法
未来の人材育成戦略!~若手の「管理職になりたい!」という気持ちを育てる方法~全6回
山本武史(やまもと・たけし)
ポテンシャルビジョン代表
看護部専門組織マネジメントコーチ
米国CTI認定プロフェッショナル・コーアクテイブ・コーチ(CPCC)
200床以上の病院看護部を専門に、人間関係を理由とした離職とメンタル不調による離脱を防ぐ専門家。看護管理者のマネジメント能力を高めて「やめたくない看護部」をつくり、心理的安全性とワーク・エンゲイジメントの向上をサポートしている。
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